高血圧や糖尿病に比べると圧倒的に認知度が低い「脂質異常症」。
自覚症状がないために無頓着な方も多いのが現状ですが、放置すれば10年20年後に突然死を招くかもしれません。
・動脈硬化から突然死を招く怖い病気
最近の自分のコレステロールや中性脂肪の数値、把握できていますか。職場や自治体の健康診断や定期的に医療機関にかかっているという方であれば血液検査でチェックできているでしょう。一方、何年も検査をしておらず、わからないという方もいるはずです。
脂質異常症の診断基準とは?
血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪(トリグリセライド)が過剰であったり、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が不足している状態のこと。具体的な数値は下記の通りです。
悪玉コレステロール(LDLコレステロール) 140mg/dL以上
善玉コレステロール(HDLコレステロール) 40mg/dL未満
中性脂肪(トリグリセライド) 150mg/dL以上
・自覚症状がないからキケン でも着実に寿命を縮める
日本では206万人を超える患者がおり、増え続けている脂質異常症の最大の問題は、症状が何もないという点です。
しかし、血管の壁にはコレステロールが蓄積してプラーク(こぶ)となり、血液の通り道がふさがれる動脈硬化におちいります。脳の血管が詰まれば脳梗塞に、心臓の血管なら心筋梗塞になるリスクがあります。
数値に異常があり、再検査と言われても症状がないために放置している方も少なくありません。しかし、それは寿命を縮める自殺行為と言えます。脂質異常症のケアは10年20年先を見据えて寿命を長くするために必要な治療なのです。
あなたも症状がないから気付いていないだけで、本当は突然死に続くレールの上を歩いているところかもしれません。
・定期的な血液検査が健康度を知るチャンス
突然死から少しでも逃れたいと願うなら、何よりまず自分のコレステロールや中性脂肪の数値を認識することが肝心です。血液検査を受けてください。
検査の頻度は年1回の健診が目安です。35歳ぐらいから気にした方がいいでしょう。職場の定期健診などの機会がない方は自治体の健診に申し込んだり、医療機関で検査を受けたりすることをおすすめします。
また、一度でも健診で引っかかったという方は医療機関を受診し、医師の指導通りに対策をして数値をコントロールするようにしてください。
ただし、数値がコントロールできていようがいまいが自覚症状に変化はありません。あくまでも基本は定期的に血液検査を受けることです。
・注意すべきは中年男性と更年期以降の女性
では、どんな人に、コレステロールや中性脂肪の数値の異常が起こりやすいのでしょうか。
たとえば、夜遅くご飯を食べたり、丼物などの脂っこい食事をとりすぎたり、運動不足で肥満になっている人は危険です。また、親が脂質異常症だとなりやすいとも言われています。
さらに、60歳以上の女性にも多く見られます。女性ホルモンには善玉コレステロールを上げる作用があるために女性は脂質異常症になりにくいのですが、閉経すると女性ホルモンが減少するため、悪玉コレステロールが高くなるのです。更年期以降の女性は、問題がないかチェックしましょう。
もし脂質異常症と診断されたら、「食事療法」や「運動療法」や「薬物療法」をしていきます。
・体調変化は感じないが続けてほしい「薬物治療」
症状がないのに薬を飲むのは億劫かもしれませんが、薬は1日1回服用すればよいものがほとんどです。1か月に1回程度通院し、経過を診ていきます。服用後1か月程度で結果が出る方も多くいます。
基本的に服用は一生ですが、高齢になったら薬が要らなくなるケースもあります。体質や生活リズムが変わって食事量が減って痩せたことで数値が安定するからです。
コレステロールを下げる薬は今日飲み忘れたから明日何かが起こるというものではありません。寿命を伸ばしたいなら飲み続けてください。
・脂質異常症の治療と予防のための「食事管理」
脂質異常症の大きな原因は食べ過ぎなどの食生活の乱れにあります。そのため、治療や予防のためには、1日3食、規則正しく食べることが重要です。
もともと規則正しい生活ができていたり、食事管理をきちんとしてくれる家族がいたりすれば、さほど問題ありませんが、比較的深刻なのが一人暮らしの若い男性です。
20~30代の若い方で、朝・昼は食べず、夕食だけという方がたまにいます。昼間は缶コーヒーだけ、毎晩コンビニ弁当で野菜もあまり食べていない、というような食生活をしていれば若いうちからコレステロール値が高くなるのは必然です。
すると、一生の間のコレステロールの平均値も上がってしまい、寿命も縮まってしまうでしょう。同様に、脂質異常症になりやすい中年の男性や更年期女性も食事管理をしなければ、突然死の可能性は高まります。
そこで、おすすめしたいのが食物繊維をたくさん摂ることです。お野菜、大豆、海藻類に含まれる食物繊維はコレステロールや脂質を身体が吸収するのを抑えてくれるので、食事をする際は先に食べるのがいいでしょう。
脂質異常症ケアに役立つ食生活は糖尿病などの他の生活習慣病ケアにも役立ちます。ぜひ実践していきましょう。
・コレステロール・中性脂肪を減らす「有酸素運動」
続いて、脂質異常症ケアに不可欠なのが運動療法です。おすすめは、有酸素運動をすることです。
ダンベルを持ち上げるような、いわゆる筋トレというよりは、お話を笑顔でできる程度のペースでするウォーキングや、遅めのランニング、水中ウォーキングがおすすめです。それらの有酸素運動を1日30分くらい、週3回程度できればいいでしょう。
無理に激しい運動を目標にしてしまうと身体に負担をかけることになり、逆効果になることもあります。最寄り駅まで自転車を使っていたという方は歩いていくようにしたり、エスカレーターをやめて階段を使うようにするなど、無理なく続く方法を選択してください。