季節性インフルエンザにご用心! | 海老名市中新田の石坂整形外科クリニック

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2018年05月25日
季節性インフルエンザにご用心!

監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授

・季節性インフルエンザとは?

 

 

通常の風邪と季節性インフルエンザは、どちらもウイルスによる感染症のひとつですが、原因となるウイルスや症状などに違いがあり、治療法も異なります。
季節性インフルエンザは、例年12~3月ごろにかけて流行します。いったん流行し始めると短期間で蔓延し、年齢や性別にかかわらず多くの人が感染してしまいます。季節性インフルエンザのウイルスはA型、B型、C型の大きく3つに分かれます。このうち流行を引き起こすのは、主にA型とB型です。なかでもA型はウイルスが頻繁に変異するため、大流行を引き起こすといわれています。

季節性インフルエンザは、早期の治療により重症化や合併症を防ぐことも可能です。また、ワクチンを接種することにより、ウイルスに感染しにくくしたり、感染した場合の重症化や合併症を防いだりする効果が期待できます。早めに医療機関を受診し、早期の治療や感染予防を心掛けましょう。

 

感染経路は?

主に、感染者の咳やくしゃみなどから放出されるウイルスを吸い込むことによって感染します(飛沫感染)。また、ウイルスが付着したものに触れた手で眼や鼻、口などの粘膜にさわり、そこからウイルスが侵入して感染する場合もあります(接触感染)。

 

 

症状は?

主な症状には、38℃以上の高熱、頭痛、喉の痛みや咳、鼻水や鼻詰まりなどがあります。通常の風邪とは異なって、症状が急激に悪化したり、関節痛や筋肉痛などの全身症状を強く感じたりするのも特徴です。また、ウイルスの潜伏期間は1~5日間といわれています。
季節性インフルエンザが重症化すると、肺炎やインフルエンザ脳症(※)などを合併する恐れもあります。特に、高齢者や妊婦、乳幼児、慢性疾患のある患者さんや免疫機能が低下している患者さんなどは、重症化しやすいといわれているため、十分に注意する必要があります。
※ インフルエンザ脳症・・・ウイルス感染による発熱後に、痙攣(けいれん)や意識障害、異常行動などがみられる。特に5歳以下での発症が多い。

 

 

・検査と診断

 

まずは、問診を行います。症状からおおよそ診断はつきますが、迅速診断キットを使用して、細いめん棒や吸引器で鼻や喉から粘膜を摂取し、ウイルス感染の有無を確認する場合もあります。

 

 

・治療法は?

 

抗インフルエンザウイルス薬を用いた薬物療法が中心となります。抗インフルエンザウイルス薬には、ザナミビル水和物とオセルタミビルリン酸塩(※1)、アマンタジン塩酸塩があります。これらは、発症してから2日(48時間)以内に投与を開始する必要があります。それ以上経過した場合には、対症療法として解熱鎮痛薬や鎮咳去痰薬などを使用します。解熱鎮痛薬の中には、15歳未満での使用を避けた方がよい薬もあるため、医師や薬剤師によく相談した上で使用しましょう。
抗インフルエンザウイルス薬との因果関係は十分に解明されてはいないものの、小児や未成年者の使用後に異常行動がみられたとの報告もあります。ご家族や周囲の方は、小児や未成年者の使用後には一人にさせないなど、患者さんの行動に注意しましょう。
また、抗インフルエンザウイルス薬と飲みあわせの悪い薬もあるため、現在かかっている病気や使用している薬のある場合には、必ず医師に伝えましょう。そのほか、乳幼児や小児、妊婦や妊娠している可能性のある場合にも、医師に相談する必要があります。
抗インフルエンザウイルス薬の概要は次の通りです。
【抗インフルエンザウイルス薬の概要】

薬剤名 ザナミビル水和物 オセルタミビルリン酸塩 アマンタジン塩酸塩
剤形 吸入薬 経口薬 経口薬
適応する
ウイルス
A型、B型 A型、B型 A型
主な
副作用
下痢、発疹、吐き気、アナフィラキシーショック(※2)、呼吸困難、気管支痙攣 など 腹痛、下痢、吐き気、アナフィラキシーショック、肺炎、慢性腎不全など 吐き気、ふらつき、幻覚、不眠、腎機能障害、心不全 など

※1 抗インフルエンザウイルス薬との因果関係は明らかではないが、この薬の服用後に異常行動がみられたとの報告もある。そのため、10歳以上の未成年での使用は、原則として差し控えることとされている(2007年3月20日 厚生労働省通達)
※2 アナフィラキシーショック・・・体内にアレルギーの原因となる物質が入り、呼吸困難や血圧低下などが現れた状態。重症になると死亡する場合もある

・ワクチンの予防接種とは?

 

残念ながら、ウイルスの感染を完全に防ぐことはできません。しかし、ワクチンを接種することにより、季節性インフルエンザにかかりにくくしたり、重症化や合併症を防いだりすることも可能です。
ワクチンの接種回数は、1回または2回の場合があります。65歳以上の高齢者、前年にワクチンの接種を受けている方、近年に季節性インフルエンザにかかったことのある13歳以上64歳以下の方は、1回の接種で十分な効果があるといわれています。2回接種する場合には、1回目から1~4週間後に2回目を接種します。個人差はありますが、ワクチンの効果は接種してから2週間ほどで現れ、約5カ月間持続するといわれています。季節性インフルエンザの流行は12~3月ごろのため、流行前に接種するのがよいでしょう。

また、体調の変化をもたらす恐れもあるため、接種当日の激しい運動や大量の飲酒は控えましょう。入浴に関しては、ワクチンの接種から1時間を経過していれば、問題はありません。
ワクチンの接種は一般医療機関で受けることができますが、保険適用外のため全額自己負担となります。しかし、次に該当する場合は、予防接種法により定期予防接種の対象に定められており、自己負担額が軽減される場合もあります。地域によって接種可能な期間や費用が異なるため、詳しくは、かかりつけ医やお近くの保健所にお問い合わせください。
【定期予防接種の対象者】
● 65歳以上の高齢者
● 60歳以上64歳以下で、心臓や腎臓、呼吸器などに慢性疾患のある方
● 60歳以上64歳以下で、免疫機能が低下している方

 

ワクチンの副反応は?

 

使用されるワクチンは、病原性を含まない不活化ワクチンのため、安全性が高いといわれています。しかし、接種当日の体調や体質などによって、さまざまな身体的反応が現れる場合もあります。これを「副反応」といいます。
副反応には、接種した部位の発疹や痛み、発熱や倦怠感などが挙げられます。いずれも軽いものが多く、2~3日で消失します。また、じんましんや痒みなどのアレルギー反応が、数日間にわたって現れる場合もあります。ワクチンとの因果関係は明らかではありませんが、まれに痙攣やアナフィラキシーショックなどの重篤な副反応が現れる場合もあります。受診の際には、いままでにかかったことのある病気や接種当日の体調、体質などを的確に医師に伝えましょう。また、ワクチンの接種を受けられない場合もあります。
【医師に相談する必要のある場合】
● 心臓や腎臓、肝臓などに慢性疾患のある方
● 痙攣の症状が現れたことのある方
● 鶏卵や鶏肉などに対してアレルギーを起こす可能性のある方
● 妊婦、妊娠している可能性のある方  など
【ワクチンの接種を受けられない場合】
● 接種当日に37.5℃以上の発熱のある方
● ワクチンを接種した際、アナフィラキシーショックなどが現れた経験のある方
● 重篤な急性疾患にかかっている方  など

・自宅療養における注意点

 

 

季節性インフルエンザにかかって適切な治療を受けた後は、自宅で安静に療養しましょう。自宅療養における注意点は次の通りです。

 

◆水分補給と十分な睡眠を
高熱により脱水症状に陥る場合もあるため、スポーツドリンクなどで水分と電解質(※)を補給しましょう。また、睡眠を十分にとって、身体を休ませることも大切です。
※電解質…体液のバランスを整える物質

 

◆できるだけ外出を控えて
周囲への感染を防ぐために、熱が下がってから少なくとも2日以上経過するまでは、外出するのを控えましょう。やむをえず外出する場合には、必ず不織布製のマスクを着用し、咳エチケット(※)を守りましょう。
※ 咳エチケット…咳やくしゃみをする際には、ティッシュなどで口や鼻を覆い、周囲の人から顔をそむけて1メートル以上離れること

 

 

・日常生活における注意点

 

日常生活において次の点に気をつけて、季節性インフルエンザの感染予防を心掛けましょう。

 

◆手洗い、うがいの習慣を
外出先から帰ったら、手洗いやうがいを行いましょう。消毒用アルコールを使用するのも有効です。また、うがいは喉の粘膜を清潔に保つだけではなく、乾燥を防ぐ効果も期待できます。

◆人込みでは不織布製のマスクを着用して
人込みに入る場合には、不織布製のマスクを着用しましょう。それだけでは完全にウイルスを防ぐことはできないため、ほかの感染予防法も継続して行うことが大切です。

 

◆栄養バランスのよい食事を
栄養バランスのよい食事を心掛け、ウイルスに対する抵抗力を身につけましょう。特に、ビタミンCは免疫力を高める効果があるといわれているため、積極的に摂取するよう心掛けましょう。

 

◆部屋の湿度を50~60%に保って
乾燥した環境ではウイルスが増殖しやすいといわれています。また、乾燥は喉や鼻の粘膜の防御機能を低下させます。加湿器などを使用して、部屋の湿度を50~60%に保つよう心掛けましょう。

 

●季節性インフルエンザの情報は下記サイトでもご確認いただけます。
国立感染症研究所 感染症情報センター:
http://idsc.nih.go.jp/index-j.html
季節性インフルエンザの情報サイト:
http://influenza.jp/flu/index.html